耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
怜は怒ってはいないくとも、がっかりはしたのかもしれない。本当のことを打ち明けられず、とうとう自分の口から彼に直接言えなかった美寧に。

だから仕方のないことなのだ。
怜が『帰れ』というなら、自分は帰らなければならない。

そう自分に言い聞かせるけれど、心がそれを受け入れようとしない。
「受け入れなければ」と思えば思うほど、苦しくてつらくてたまらなくなる。水中で溺れるように息苦しくなった。



ひっきりなしに雨が傘を叩く。地面に跳ね返ったしずくが足元を濡らしていく。空を覆う分厚い雨雲のせいで、日没前だというのに薄暗い。
とはいえ、もうすぐその“日没”だ。本格的に真っ暗になってしまう前に帰らなければ。遅くなると、怜に心配をかけてしまう。

スマホを持ってからというもの、美寧は帰宅すると怜に【今帰ったよ】と帰宅連絡メッセージを送ることにしていた。
そうするように怜に言われたわけではない。美寧が自主的に始めた。

『自分のことを心配してくれる彼のことを安心させたい』———というのは建前で、本当は少しだけでも怜とつながっていたいから。

画面に映る無機質な文字ですら、怜からのものは温かく感じる。嬉しくなる。

(早く帰ってれいちゃんにメッセージを送らなきゃ……)

怜を心配させたくない。彼が帰ってくる前に作りたいものもある。

美寧は足を速めた。


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