耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「大丈夫。おれ、ちゃんとみねちゃんのこと知ってるから」

「………」

男の言いたいことが全然分からない。ただ掴まれた腕の痛みと湧き上がる気持ち悪さ、そして恐怖だけだ。

「おれ、あの喫茶店でひとめ君を見た時、分かったんだ。君がおれの運命の人なんだって」

「………」

「何度か行ったけど、きみは居なくて、マスターに聞いたけど連絡先は教えてくれないし、」

「えっ、」

「やっときみに会えたと思っても、おれが行くといつもあの男子バイトの方がすぐやってくる」

マスターに自分の連絡先を聞いたとは思わなかった。もしかしたら、マスターは前々から何か察知していたのかもしれない。だから遅くなると颯介を見送りにつけたし、この男の接客は颯介がさりげなく買って出てくれていたのか———

「ああ…でも別に気にしてないよ?みねちゃんが仕事熱心だってこと分かってるから……おれのせいで失敗して、マスターに怒られちゃ可哀そうだしね」

男は気味の悪い笑顔のまま、怯える美寧のことなど構うふうもなく、自分の言いたいことだけを口にしていく。

「それよりも、さっきみねちゃんがスーパーで買ったもので、何を作ってくれるか、楽しみだな」

「っ、」

スーパーで買い物をしているところからつけられていたことを知って、美寧の体に悪寒が走った。
震える手で握る袋の中で、カタカタと何かがぶつかる音がする。
中にはサバ缶とトマト缶、そしてカレールー。それは今夜美寧が怜のために作るメニューの材料。怜のための物。決して目の前の男のための物ではない。

美寧は買い物袋の紐をギュッと強く握りしめ、小さく左右に首を振った。

「遠慮しなくていいんだって……おれはきみが作ってくれるものならなんだって嬉しいんだから」

美寧の腕を男の手がギリギリと締めつける。痛みに漏れそうになる声を、奥歯を噛み締め必死に(こら)える。
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