耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「料理だけじゃない……編み物だって」

「なっ、……なんでそれを………」

「あの喫茶店の窓のとこのテーブルで編み物してたよね?あんまり一生懸命だったから、知らないふりをしてあげたけど、あれ、おれへのクリスマスプレゼントなんだよな?」

「ちがっ……あれは、」

「あれ?ちがうの?まさか、あの若いバイトくんにあげる?」

男の口角は上がっているのに、瞳は全然笑っていない。美寧は小さく首を横に振りながらじりっと後ずさった。

「ちがうの?じゃあ、もしかしてあの男……?たまに一緒に歩いてるよね……ちょっと年上の……」

ハッと息を呑んだ美寧の瞳に、男が「ふ~ん、そうなんだ」と言いながら頬がピクリと痙攣するのが映る。

目と口の形は弧を描いて笑っている形なのに、まるで能面を付けたかのように動かない。美寧の腕を掴んだ手に握力のすべてを込めているのか、掴まれたところからじんじんと痺れが広がっていく。

「は、離して……」

美寧がじりじりと足を後ろに下げるたび、男がにじり寄ってくる。

「喫茶店のマスターやバイトくんだけじゃなくて、あんなイケメンまで………そんな清純そうな顔して、平気で男を手玉にとるんだな———おそろしい」

じりじりと下がる美寧に、能面のような顔の男が厭らしい笑みを浮かべ、言った。

「おれ以外の男を見るなんて———許さないからなっ」

男はそう言うと、次の瞬間、勢いよく美寧の腕を引いた。
不意打ちで腕を引かれた体が傾く。その隙に男は反対の腕を伸ばして美寧を抱き込むよう肩に手を回した。

「いやっ、———」

男に抱き込まれた瞬間、美寧の全身が恐怖と悪寒で震えた。足がガクガクと震えてその場に崩れ落ちそうになる。

それでも美寧は必死にもがいた。
両手を突き出し、男の体から少しでも自分の体を離そうとする。けれど、男の方も更に腕に力を込めてくる。

「あのイケメンとは、仲の良い兄妹だと思ってたから許してたのに———これからじっくりお仕置きだね」

耳のすぐ横で囁かれ、男の息がかかってあまりの気持ち悪さにめまいがする。

(れいちゃんっ!!)

心の中で叫んだ時———

「ぐわぁっ!!」

男が叫ぶ声が聞こえ、急に体が楽になった。
おそるおそる顔を上げる。

美寧の目に映ったのは、地面に転がる男。そしてその背中に膝を着き、腕をねじり上げている一人の男性。

それは———


「残念、ハズレだ。イケメンで仲良い兄は、僕のことだからね」


兄、聡臣(あきおみ)だった。





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