耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
それからは賑やかに食卓を囲んだ。

怜の作ったふわふわのオムレツは、ご馳走を食べ慣れている総一郎や聡臣をも(うな)らせた。
生姜の入ったコンソメスープは優しい味で、初雪の積もる寒い朝にぴったりだった。

美寧がひとつひとつ丁寧に洗って切ったサラダは、歌寿子が近所の直売所で買ってきた新鮮な野菜を使った。サラダを食べた男性三人は、口をそろえて「美味しい」と言ってくれた。
歌寿子が『買ってきたパンでかんにんだす』と言っていたパンも、申し分なく美味しかった。

父や兄と色々な話をしながら、みんなで同じ食卓を囲み同じものを食べる。
それは美寧が夢にまで見た光景だった。

これまで空いていた隙間を埋めるように、父とたくさん会話をした。
父も美寧や怜の話を聞き、時々それの兄が口を挟む。

家族での温かな食卓と楽しい会話。それが叶っただけでも夢を見ているようなのに、その中に大好きな人が———怜がいる。


父にお代わりを頼まれ、淹れた紅茶。
カップから立ち上る湯気なのか、それとも自分の瞳が潤んでいるのか。視界の向こうがほんわかとかすんで見える。

うっかり気をゆるめると泣き出してしまいそうで、それを(こら)えるのは大変だったけれど、それすらも嬉しくてたまらなかった。





【第十六話 了】 第十七話につづく。
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