耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
好きな人にそんなふうに言われた後に、「いい?」とお伺いされて断れる女の子はいるのだろうか。少なくとも美寧には無理。

「私も。一緒にいるだけで幸せ」

ぎゅっと抱き着くと、同じように抱きしめ返され、「好き」という気持ちがどんどん膨らんでいく。

「れいちゃん、大好き」

「俺も大好きですよ、ミネ」

「キス……いっぱいして……」

「キスだけでは済まなくなるかもしれませんけど?」

「………ちゃんと分かってるもん」

前とは違うのに、とむくれると、尖らせた唇にちゅっと吸い付くようなキスが落とされる。甘く細められた涼やかな瞳に、またしても胸が甘く鳴る。

「でも……あのね……」

言いかけたくせに口を閉じた美寧。俯いて視線をさ迷わせていると、怜が「ん?」と顔をのぞき込んでくる。
急かすことなくじっと続きを待ってくれる怜に、美寧は思い切って口を開いた。

「今度はちゃんと顔を見たいの……。さっきはれいちゃんの顔が見えないのが寂しかったから………」

美寧は自分を“欲しがる”時の怜の表情(かお)が好きだ。

普段は涼しげな瞳には溶けそうなほどの熱が宿り、どこか苦しげに眉を寄せながらもまっすぐに美寧を見つめてくる。
その目に見つめられるだけで、胸が甘く震えて、身も心もとろとろと溶かされてしまうのだ。

「更新…してくれる………?」

上目遣いに見上げると、涼やかな瞳が見張られた。
その後すぐ、なぜか一旦美寧から顔を逸らした怜。片手で口元を覆っている。

「れいちゃん……?」

また何か変なことを言ってしまったのか不安になりかけた時。
怜は美寧の腕の中から犬をソファーに下ろすと、その小さな体をふわりと持ち上げた。

寝室(へや)に行きます」

怜の首に腕を回して、その胸に顔を(うず)める。

「たくさん『更新』させてください———俺の奥さん(ma minette)

耳元で柔らかく囁かれた声に赤くなりながら頷くと、「可愛すぎて困るな」と独り言ちる声が届く。

そのまま怜の部屋(しんしつ)のベッドに美寧を降ろした怜は、丁寧な『更新(アップデート)』を存分にした。


それで結局、美寧が怜と作った“お節”を食べられたのは、翌朝になってからだった。



【番外編 了】
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