耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
何て言ったらいいのか分からないという顔をした怜にむかって、美寧は言った。

「あの部屋から出る時にね……この子が『ひとりにしないで』って言った気がしたの。だから、」

「置いてこれなかったの」と美寧が口にすると同時に、腕に抱いていたぬいぐるみごと強く抱きしめられた。

グリグリと額を肩口に押しつけられ、思わず「くすぐったいよ」と身を捩る。
すると肩に額を乗せていた怜がこちらに顔を向けた。

「せっかく我慢しようと思っていたのに………」

「え?」

「もっと………『更新』してもいいですか?」

「更新?………えっと、さっきの?」

「さっきのもですが、ゆうべのも」

「え?………あっ」

少し考えてから昨夜のことを言っているのだと気付く。

「だめ?———あなたはあれで足りた?」

ねだるように顔をのぞき込まれて、反射的に顔を左右にふる。じわりと熱を持った頬に、怜が「ちゅっ」と音を立てた。

美寧は思わず訊いた。

「………れいちゃんは?」

「ん?」

「れいちゃんも足りなかった?」

昨夜は美寧ばっかり(・・・・)だったので、怜は不満だったのかもしれないと少し不安になる。すると、そんな美寧の心理を読んだのか、怜が微笑んだ。

「そうですね。足りないかと言えば足りていないし、足りたと言えば足りている、かな」

「かな」のところで小首を傾げられ、胸がきゅぅんと鳴る。一見クールな彼が見せる、意外な可愛さに美寧はとても弱い。

「えっと……、どっち?」

「あなたを欲しがる気持ちに際限はないので、どこまでいっても足りることはないでしょう。———ですが、あなたと一緒にいるだけで俺はいつでも満ち足りていますよ」

さっきよりも大きく胸が高鳴った。
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