耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「なにか気になるものでもありましたか?」

「え?私?」

「はい」

怜に訊ねられ、美寧は自分の目に留まったものをガラスケースの上から指さした。

「このお花のネックレス、可愛いなって」

「これですか?」

美寧が指したのは、小さな花の形をしたネックレス。ゴールドの細いチェーンの先に八枚の花びらの形をしたダイヤモンドがあしらわれ、その隣に小さな緑の宝石がついている。

可愛らしいネックレスに見惚れていた美寧の隣から、「すみません」と言う怜の声が聞こえた。
その言葉に、怜の物を見に行くのだったことを思い出した。うっかり見入ってしまっていたことに気付いた美寧は、慌ててネックレスから目を剥がす。

「ごめんね。早くれいちゃんの見たいとこに行こう」

言いながら見上げた怜の顔は、こちらではなくまっすぐ前を向いていた。そしてショーケースの向こうから近付いてきた店員に、「これ、見せて頂いてもいいでしょうか」と訊く。

「え?」

戸惑う美寧の目の前で店員がショーケースの中からネックレスを取り出し、ビロードの布が張られたケースの上に置く。それから「着けてみられますか?」と訊いてきた。

「いえ、あの、」

「けっこうです」とミネが断る前に、怜が店員に向かって「はい。お願いします」と言う。

怜は出されたネックレスを手に取ると美寧の首元に持っていき、「ちょっといいですか?」と美寧の髪を左側に寄せてから器用に留め具をつけた。

「とてもよく似合っています」

ついさっき聞いたのと同じ台詞に、美寧は目を(しばた)かせる。

「よくお似合いですよ」と言った店員が、美寧の目の前に鏡を置いた。美寧の目に自分の顔が映る。ちょうど鎖骨と鎖骨の間のくぼみに、小さな花が咲いたようにぴったりと収まっている。

花びらの部分はダイヤモンド、脇にある緑の石はエメラルド。
そう店員が説明してくれた。
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