耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
[3]


祝日と定休日を挟んだ二日ぶりの【カフェ ラプワール】。
美寧はいつものように家から着てきた黒いワンピースの上に、肩口にフリルのついた白いエプロンを着け、アルバイトに励んでいた。


「いつものブレンド・ホットでございます」

丸いトレーからカウンターへと、慎重にコーヒーを置く。

「ありがとな、美寧ちゃん」

「それにしても上手になったなぁ」

常連客からそう言われ、美寧は「ありがとうございます」と笑顔になる。
彼女の笑顔につられて、田中は元から細い目を更に糸のように細め、柴田は大きな口を開け「あの頃が懐かしいな。わはは」と笑った。

「それにしても、今日の美寧ちゃんはなんだかいつもと違うな……」

田中が言う。

「そうか?わしにはどこもおかしいところは見つからないぞ?」

首を傾げる柴田に、田中が呆れた口調で「あほう。誰も『おかしい』なんて一言も言ってないだろう」と突っ込む。

「なんだと~、誰があほだって?お前がいつもと違うなんて言うからだろうが」

「いつもと違うっていうのはな、いい意味で言ったんだよ」

「いい意味?」

「今日の美寧ちゃんは、なんだかいつもにまして輝いてるような……」

田中と柴田の漫才のような掛け合いを黙って聞いていた美寧だけど、田中の言った最後の台詞に、少し頬を染めた。

「ああ、そう言われてみれば確かに———」

田中が言いかけた途中で、カランカランと入り口から音がした。
来店を告げるカウベルに、美寧は反射的に振り返った。

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