偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
無意識に耳を触りそうになるが、我慢、我慢。
少しだけ期待に胸を膨らませ、レジデンスへ帰った。

「ただいま、李亜」

帰ってきた御津川氏の唇が私の唇に触れる。

「おかえりなさい」

「今日の晩メシはなんだ?
もう腹、ペコペコだ」

笑って彼が、食卓に着く。
私もキッチンに立ってご飯をついだ。

夏原社長と再会して一週間。
あれから特になにもなく、過ごしている。

……ううん、嘘。

私は夏原社長に、すぐにでも復帰して働きたい旨、連絡を入れていた。
彼も喜んでくれ、近いうちに一度会って、打ち合わせをすることになっている。
でも、その前にやっておかねばならないことがあるのだ。

「やっぱり、李亜のメシは旨いな」

本当に美味しそうに、にこにこと笑いながら御津川氏はごはんを食べている。
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