偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
俯いた御津川氏から出た声は、腹の底から凍えるほど冷たかった。

「いまでは高級種になったアメリカンカールのように、のちに高値がつく原種の猫を笑うような愚行を犯してないといいですね」

「なっ、貴様ッ!」

顔を上げた御津川氏が、人さえ殺せそうなほどの視線で東峰さんを睨む。
周囲の人間はざわめいたが、当の東峰さんは唇に僅かな笑みをのせ、私たちを見ている。

「……!」

すぅっ、と東峰さんが手を上げ、辺りがしん、と静まりかえった。

「さあ、どうでしょうね」

くすり、と彼が笑うと同時に、御津川氏は私の手を掴んで立ち上がった。

「いくぞ、李亜!」

私の返事など待たず、踵を返して足早に彼は歩いていく。
ラウンジを出、エレベーターホールに来てようやく、手を離してくれた。
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