オフィスラブはじまってました
「水……、友だちが可愛い子がいるからどうしても行きたいって言って」

 それを聞いて、ひなとは笑う。

「柚月さんでも、可愛い子がいるからってお店に通ったりするんですね」

「いや、それを理由に行ったの、友人で、俺はついてっただけだから」

 慌てて否定する柚月がちょっと可愛らしく見え、また笑ってしまった。

「でも、さっきからお店の話とか聞いてると、柚月さんの会社とうちの会社、近いんですね。
 降りるバス停違うけど」
と言うと、柚月が沈黙した。

 ……なんだろう。
 この緊迫感。

 会社のことに触れて欲しくないとか?

 やはり、柚月さん、人には言えないようなお仕事をなさってるとか?

 スパイとか、公安とか、内調とかっ、
と妄想が駆け巡り、会社のことにはそれ以上、触れないでおこう、と思ったのだが。

 そのせいで会話が途切れてしまう。
< 108 / 576 >

この作品をシェア

pagetop