オフィスラブはじまってました
「『ヒムラさん』は、檜村部長だったんですね。
部長だから、おじさんかなと勝手に思ってたので、気がつきませんでした」
と言って、ひなとは、ははは、と笑った。
「でも、いつも柚月さん、違うバス停で降りてましたよね」
「いや、最初の一回以外は一緒に降りてた。
だが、お前いつも、じゃあ、とか言って、さっさと行ってしまって、振り返らなかっただろ」
言い出すタイミングを失ってたんだ、と言ったあとで、さっきの女性が消えたエレベーターの方を見ながら、柚月が訊いてきた。
「ところで、今のは誰だ」
「知りません」
「話し込んでたじゃないか」
「そうなんですけどね。
向こうから話しかけて来られただけなので。
どなただったんですかね?」
「……顔と名前、覚えろ、人事。
そうだ、お前。
この週末は実家に帰るのか?」