オフィスラブはじまってました



「『ヒムラさん』は、檜村部長だったんですね。
 部長だから、おじさんかなと勝手に思ってたので、気がつきませんでした」
と言って、ひなとは、ははは、と笑った。

「でも、いつも柚月さん、違うバス停で降りてましたよね」

「いや、最初の一回以外は一緒に降りてた。
 だが、お前いつも、じゃあ、とか言って、さっさと行ってしまって、振り返らなかっただろ」

 言い出すタイミングを失ってたんだ、と言ったあとで、さっきの女性が消えたエレベーターの方を見ながら、柚月が訊いてきた。

「ところで、今のは誰だ」

「知りません」

「話し込んでたじゃないか」

「そうなんですけどね。
 向こうから話しかけて来られただけなので。

 どなただったんですかね?」

「……顔と名前、覚えろ、人事。

 そうだ、お前。
 この週末は実家に帰るのか?」
< 162 / 576 >

この作品をシェア

pagetop