オフィスラブはじまってました




「あ、そこがうちです。
 あれっ? 車とめられるかな?」
と住宅街の角を曲がってすぐ、ひなとは言った。

 ひなとの実家は、比較的新しく、今風の建築で見栄えは悪くないのだが。

 うーん。
 サイズ的には、柚月さんちのリビング二個分くらいかな、とひなとは思い、ははは……と笑った。

 そもそも、この車、うちの駐車場に入るのだろうかな?
と思ったひなとは白い塀の前で車をとめてもらい、一旦、降りた。

 ちょうど庭先から両親の声が聞こえてくる。

 庭仕事でもしているようだ、と思いながら、ひなとは、ひょいと門をくぐった。

「おかあさ……」
とひなとが呼びかけたとき、両親がちょうど揉めはじめる。

「それもう駄目だろう、捨てたらどうだ」
と父、智幸(ともゆき)が枯れかけた観葉植物の鉢を指差し言っていた。

 すると、母、景子(けいこ)が、
「なに言ってるのよ。
 いつか、そのうち、なにかがどうにかなるかもしれないじゃないっ」
と言う。

 それを見て柚月が、
「……お前は母親似か?」
と言ってきた。

 いや、どの辺がですか……。
< 280 / 576 >

この作品をシェア

pagetop