オフィスラブはじまってました
「あ、そこがうちです。
あれっ? 車とめられるかな?」
と住宅街の角を曲がってすぐ、ひなとは言った。
ひなとの実家は、比較的新しく、今風の建築で見栄えは悪くないのだが。
うーん。
サイズ的には、柚月さんちのリビング二個分くらいかな、とひなとは思い、ははは……と笑った。
そもそも、この車、うちの駐車場に入るのだろうかな?
と思ったひなとは白い塀の前で車をとめてもらい、一旦、降りた。
ちょうど庭先から両親の声が聞こえてくる。
庭仕事でもしているようだ、と思いながら、ひなとは、ひょいと門をくぐった。
「おかあさ……」
とひなとが呼びかけたとき、両親がちょうど揉めはじめる。
「それもう駄目だろう、捨てたらどうだ」
と父、智幸が枯れかけた観葉植物の鉢を指差し言っていた。
すると、母、景子が、
「なに言ってるのよ。
いつか、そのうち、なにかがどうにかなるかもしれないじゃないっ」
と言う。
それを見て柚月が、
「……お前は母親似か?」
と言ってきた。
いや、どの辺がですか……。