オフィスラブはじまってました
「あら、ひなと。
 あんた、帰ってき……」

 こちらに気づいた母親の言葉が途中で止まる。
 その目は柚月を見ているようだった。

「あ、お母さん。
 こちら、同じ会社で同じアパー……」

「いやだ、もうっ。
 あんた、こういうときは早く言いなさいよっ、もうっ。

 ひなとの母の景子です。
 初めまして」
と園芸用の手袋を外し、麦わら帽子を脱いだ母が深々と柚月に頭を下げている。

 ……なんだろう。

 さっきの比呂子さんたちの反応と似ているんだが、と思うひなとの横で、柚月がふたりに挨拶をした。

「あ、初めまして。
 檜村柚月と申します」

 その名前を聞いて、景子は、ん? という顔をする。
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