オフィスラブはじまってました
「だっていらないでしょっ」

「いやいやいや。
 小学校の教科書の方がいらないよっ」

「あんたの子どもが使うかもしれないじゃないっ」
「それは、そのとき国から支給されるよっ」

「そんなことより、本題、いつ、入るのよーっ」
「本題、これよーっ」
ともめる母子の側で、お盆に晩酌セットを載せてきた父が、ギクシャクしながら、柚月に酒を勧めはじめた。

「あっ、いえ。
 車ですので」

「父の智幸と申します」

「運転して帰らないといけないので」

「ふつつかな娘ですが、よろしくお願いいたします」

「車がありますので」

 あっちはあっちで、なにも会話が噛み合ってないな……と思いながら、ひなとは断りきれずに酒をそそがれている柚月を見ていた。



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