オフィスラブはじまってました
 


 ひなとたちもお茶から酒にスライドし、どんどん酒の肴も出てきた頃、ひなとは、ちょいちょいと柚月に手招きされた。

 ……そのちょいちょい、可愛いではないですか、とグラスを手にぼんやりしていたのだが。

 父にひなとの運動会の思い出を聞かされている柚月の手招きが段々激しくなってくる。

 なにやら急いでいるようだ、と思い、立ち上がったタイミングで、柚月が言った。

「すみません。
 ちょっとお手洗いに」

「ああ、ひなと。
 ご案内して差し上げて」
といい気分で酔っている景子が言う。

 なんだ。
 お手洗いに行きたくて焦っていたのか、と思いながら、廊下に出て、トイレの前まで連れて行き、
「此処です」
と言ったのだが、柚月は切羽詰まった様子で、

「いや、そうじゃないっ」
と言ってくる。
< 288 / 576 >

この作品をシェア

pagetop