オフィスラブはじまってました




 友だちとご飯を食べて、夜道を歩いて帰っていたひなとは、チラ、とハッピーエンド荘の二階を見上げた。

 今日も暗いな、201。

 実はカーテンがあるだけで住んでないのでは?
と思いながら、その部屋の窓を見ていると、いきなり耳許で声がした。

「実は、生きた人間は住んでなかったりしてな……」

 ひっ、と振り返ると、自転車を肩に担いだ緒方が立っていた。

「お、緒方さんっ。
 お疲れ様ですっ」
と言ったあとで、此処、職場じゃなかったな、と気づき、

「こんばんはっ」
と言い直して苦笑いする。
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