オフィスラブはじまってました
「すみません。
 明日はもっと早く来ます」
と慌てて謝ると、瑠美子は、

「そろそろ気持ちがたるんでくる頃だからね。
 気を引き締めないとっ」
と言ってくる。

 最敬礼する勢いで、はいっ、と返事をすると、うむ、といった感じに瑠美子は頷いた。

 ひなとに引き継ぎしてくれた瑠美子は、この春、人事部から秘書室に異動になったのだ。

 だが、人事部と秘書室は近く、一緒に仕事する機会も多いので、常に見張られている感じだ。

 うーむ。
 20分前で充分早いかと思ったけど、まだまだなんだな。

 そういえば、ヒムラさんは私より先に出てたもんな。

 新人でもなさそうなのに。

 まあ、ヒムラさんの会社、何処だか知らないから、会社遠いだけかもしれないけど。

 などと考えていると、瑠美子がまるでスパイが受け渡しをするみたいに、さりげなく、ひなとの手に老舗の和菓子を握らせてきた。

「いただきものがちょっとあまったからあげるわ。
 見つからないところで食べなさい」
と、こそっと言われ、

「あっ、ありがとうございますっ」
と頭を下げると、瑠美子はまた、うむ、という感じに頷き、出て行った。
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