オフィスラブはじまってました





 今日は、ちょっと遅くなったな。

 そう思いながら、帰宅した柚月がアパートの鍵を開けようとしていると、鼻歌まじりに、ひなとが帰ってきた。

 一旦、帰って着替えたあとで、買い物にでも行ってきたらしい、カジュアルな服装だった。

「あ、ヒムラさん、こんばんはー」
とひなとが陽気に話しかけてくる。

「今、コンビニ行ってきたんですよ。
 ちょっと遠いですけど、気候がいいときは、お散歩にちょうどいいですねー」

「そうだな。
 いいときはな」
と言う柚月の頭の中では、ひなとっぽいハムスターが雪の降り積もる中、コンビニに歩いて行こうとして、埋まっていた。

 こいつと話していると、時折、無性に不安になるな、と思っていると、ひなとが、

「あ、そうだ、ヒムラさん。
 これ」
と手にしていた買い物袋の中をゴソゴソやりながら、ひなとが言ってきた。

 はい、と柚月の手に、小さなビールの缶を5缶載せてくれる。
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