翠玉の監察医 日出づる国
一 言葉
世界法医学研究所の最年少監察医である神楽蘭(かぐららん)は、今日もご遺体を解剖して報告書を書いていた。

「蘭、お疲れ様〜!」

報告書を書く蘭の目の前にコーヒーとお菓子が置かれる。蘭が顔を上げると、ドイツ人監察医のゼルダ・ゾルヴィッグがニコリと笑いかけてくれた。

「ありがとうございます、ゼルダ」

蘭はお礼を言い、コーヒーに口をつける。そしてその隣に置かれたリボンで可愛らしくラッピングされたお菓子を見て「ゼルダの手作りですか?」と訊ねる。

「そう、久しぶりに作ったわ!ケーゼトルテ!おいしくできたのよ!」

ゼルダは嬉しそうに笑う。ケーゼトルテとはドイツのチーズケーキのことだ。しかし日本のものとは違い濃厚なクリームチーズではなく、ヨーグルトに似たフレッシュチーズの一種を使用したものが主流である。

「ありがとうございます。いただきます」

蘭は手を合わせ、ケーゼトルテを口にする。久しぶりに食べた甘いものに蘭は「おいしいです」と言った。ゼルダはますます笑顔になり、蘭を「ありがと〜!!」と言いながら抱き締める。
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