翠玉の監察医 日出づる国
「ゼルダ、食べにくいです」

蘭がそう言うと、「なら食べさせてあげる!」とますます抱きついてくる。蘭は表情をあまり変えることはなくもたれかかってくるゼルダの体を支えた。

「ゼルダ、離れてやれ。蘭はお前より小柄なんだから潰れそうだ」

蘭とゼルダを見てスウェーデン人監察医のマルティン・スガルドが呆れながら言う。その手にはゼルダの作ったケーゼトルテがあり、食べている。

「それにしてもうまいな」

「ありがと!」

マルティンにも褒められ、ゼルダは笑う。その時、アメリカ人監察医のアーサー・スチュアートが言う。

「でももう少し甘くてもいいと思う」

「これ以上甘くしたら虫歯になるわよ」

ゼルダが呆れ、マルティンも「そうだぞ」と頷く。しかしアーサーは「俺のところはもっと甘いんだけどな。おいしいけど」とケーゼトルテを口にする。そして研修として世界法医学研究所に来ている探偵の深森圭介(ふかもりけいすけ)の方を向いた。
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