翠玉の監察医 日出づる国
四 最悪な経営者
数週間後、蘭は桜木刑事と共に小向工場を訪れていた。小向工場の社長である小向智司(こむかいさとし)と話すためだ。

「話したいことって何なんです?私はもうすぐ会食があるんです。たかが従業員数人が死んだくらいで……」

ブツブツと言い続ける智司を見て、桜木刑事がムッとしたような顔を見せる。コイツには経営者としてまず肝心なことが抜けてるだろ、と言いたげだ。それに対し、蘭は無表情のまま解剖結果を見せる。

「今回ミゲウさんの解剖を行った結果、ミゲウさんは事故で階段から転落したのではなく、事故に見せかけて殺害されたのだとわかりました」

「な、何を根拠にそんなことを言っているんだ!!お前のような小娘にわかるわけないだろう!!」

智司は明らかな動揺を見せ蘭を指差し、顔を怒りで赤くしながら怒鳴る。蘭は「人に指を差すのは失礼な行為です」と言い話し始めた。

「ミゲウさんの体には、多くの外傷が見られました。階段から落ちる以前からあるものです。傷の状態から見て一番古い傷は三年前ーーーミゲウさんがこの工場で働き始めた頃からのものとわかりました」
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