翠玉の監察医 日出づる国
蘭の表情には悲しみが浮かんでいた。その表情を見て、ゼルダたちも話すのをやめる。

「亡くなった方の声はたくさん聞いてきました。それをご遺族の方に伝えてきました。でも、私には生きている人の本当に伝えたい言葉が何かわかりません。生きている人の言葉を汲み取ることの方が難しいのです」

蘭の頭の中に思い出が蘇る。その思い出に蘭はまたブローチをギュッと掴んだ。

『蘭、君は逃げるんだ。君は幸せにならなきゃいけない……』

あの時、星夜(せいや)さんは何を私に伝えたかったのでしょうか?

訊ねたくても、その答えは返ってくることはない。蘭は優しい目を向けるマルティンを見つめ、懐かしい記憶を思い出して悲しげな表情のまま俯いた。





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