誰よりも不遜で、臆病な君に。

ケイティはすべて冷静に観察し、心の中でバツを付けた。

コンラッドはやることなすこと順序が違う。貴族の令嬢を娶りたいのであれば、まずは父親に打診するところからだ。彼が城内にいると分かっているのに気持ちが先走って屋敷を訪れるあたり、思慮の深い人物とは思えない。

加えて、いくら気もそぞろだといっても、出された茶菓子の感想も言わなければ、味わおうとさえしないところもいただけない。
なにより気に障ったのは『必ず幸せにする』などと軽々しく口走ったことだ。
娘が一緒に来ていないということは、すでに彼女の気持ちは無視していることと同義だろうに。

ケイティは早く娘に結婚してほしい。だけど、相手は誰でもいいわけではないのだ。

「コンラッド様がいらしていると?」

息を切らせて入ってきたのは、イートン伯爵とケネスだ。

「あなた。お早かったですわね」

「ケネスが、コンラッド様がわけのわからないことを口走って城を出ていったというからね。ああ、君の出した使いとは途中であったよ。そのまま城に、私とケネスが抜けた理由を説明させに行かせた」

「かしこまりました。あなたとケネスの分のお茶も用意しましょうね」

ケイティは立ち上がり、ソファの席をふたりに譲った。メイドに、お茶と菓子の追加を頼む。

「さて。コンラッド様。突然の訪問の理由を伺ってもよろしいですかな」

ソファに腰掛けたイートン伯爵はにこやかにほほ笑み、ケネスはその後ろに立ち、威圧感のある瞳でコンラッドを見つめる。
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