誰よりも不遜で、臆病な君に。

「ふむ。聞いていれば、ロザリンド様とクロエを足して二で割ったような感じなのかな」

「クリスはクリスですよ。ロザリーともクロエとも違います」

はっきり断言したケネスに、バイロンは笑みが止められない。
なんだ、この男。案外ぞっこんなのではないか。

「お父様、お客様です」

そこに、ふたりの少年が飛び込んでくる。
バイロンとクロエの息子、ルーサーとマーティーだ。
バイロンは結婚を機に、臣籍降下してマクラウド公爵位を得て、王都の貴族街に屋敷を構えた。
守るべき家名と屋敷があれば、この先自分になにかがあったとしても、クロエが生きていくのに困らないだろうと思ったからだ。

子供に関しては特に意識はしていなかったが、三年目に第一子のルーサーが生まれた。
バイロンの心配をよそに、彼の体には何の異常もなく、ほら見たことかと、クロエに勝ち誇られたのをよく覚えている。

その二年後にはマーティーが生まれる。こちらは少し言語の習得が遅く、バイロンは過度に心配したが、クロエは笑って言った。
『この子は言葉を内にため込んでいるだけです。今に驚くほど話出しますよ』と。
彼女の言う通り、二歳を過ぎたころから問題なく話すようになる。動きもあまり機敏ではなく、全体的にのんびりした子供のようだ。

ふたりの息子を産み、母としてのたくましさも身に着けたクロエは、美しさに凄みが増してきている。
数年は子育てに専念していたが、やはり屋敷でじっとしているタイプではなく、今は再び王城で福祉担当の仕事をしている。
< 69 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop