誰よりも不遜で、臆病な君に。


あきれたように窓からその様子を眺めていたのはバイロンだ。

「やれやれ、難攻不落とはこのことだな」

今のコンラッドならばそこそこの良縁相手だと思うのに、一家そろってこの態度なことに半分呆れてしまう。

「お兄様。会えると思わなかったからうれしいわ」

クロエの甘えた声が聞こえ、バイロンは興味深くイートン伯爵家の兄妹を見つめる。
クロエは、先ほどとは違う明るい笑顔で、ケネスの腕に抱き着いていた。

「こらこら、いつまでも子供じゃないんだから」

「いいじゃない。ねぇ。お兄様はまだお仕事終わらないの? 一緒に帰れない?」

「悪いね、クロエ。今日はまだ仕事が残っているんだ。気を付けてお帰り。お前を狙うハイエナが今月中はいるらしいから、あまり城には来るんじゃないよ」

「はぁい」

ケネスは伯爵家の馬車を門前に移動させるように従僕へ言いつけ、自らクロエを連れて、城内へと戻っていった。

「仲が良すぎるんじゃないのか? イートン伯爵家は」

少しばかり呆れたようにつぶやいた後、バイロンも自らの執務室へと戻っていった。



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