年下ピアニストの蜜愛エチュード
「前はもっと硬質だった。クリスタルみたいに濁りがなくて、本当にきれいだったけど、少し頑なというか……でも、今は違う。いい意味で余裕ができて、まろやかさが出てきたみたい」
千晶を見る表情はにこやかだが、どこか遠くを見ているようでもあり、かすかに距離を感じさせる。
アンジェロは特別なピアニストだ。本当に音色が変わったのであれば、西村の立場としていろいろ思うこともあるのだろう。
「それによく笑うようになった。恋ってすごいわね。あなたのおかげ……なのかしら?」
「そ、そんなはずないです。だって私たち、知り合ったばかりですよ」
「ああ、誤解しないで。私は感謝しているの。いいお付き合いだと思っているし、二人とも大人だもの。横から口出しすることじゃないでしょ?」
いったいどう答えればいいのだろう? 千晶はうろたえて、視線を落とした。
「気づいていると思うけど、アンジェロって子どもっぽいところがあるの。末っ子でかわいがられてきたし、とにかくピアノに夢中だったから。注射も嫌いで……ほら、健診って採血があるでしょ? だから病院も怖がってたんだけど、ここであなたに会って、すごく安心したらしいの」
「あ、でも私、その時に彼を怒らせてしまったんです。後で、何度も謝られましたけど」
「その話は聞いたわ。あの子のピアノが好きって言ってくれたんでしょ? だからよ」
千晶は意味がわからず、目をしばたたく。
すると西村は肩をすくめて、またワインを口に運んだ。
「アンジェロ、まだ自分に自信がないのよ」
「まさか!」
「私のプロデュースにも問題があったの。すでにいろんなコンクールで実績はあったし、見た目がいいから、モデルっぽいことまでやらせちゃって……結果的にすごく人気が出たけど、音楽に興味がない人たちにも騒がれてね。ピアノに人生をかけている子だから、アイドル扱いはきつかったみたい」
「あ……」
千晶を見る表情はにこやかだが、どこか遠くを見ているようでもあり、かすかに距離を感じさせる。
アンジェロは特別なピアニストだ。本当に音色が変わったのであれば、西村の立場としていろいろ思うこともあるのだろう。
「それによく笑うようになった。恋ってすごいわね。あなたのおかげ……なのかしら?」
「そ、そんなはずないです。だって私たち、知り合ったばかりですよ」
「ああ、誤解しないで。私は感謝しているの。いいお付き合いだと思っているし、二人とも大人だもの。横から口出しすることじゃないでしょ?」
いったいどう答えればいいのだろう? 千晶はうろたえて、視線を落とした。
「気づいていると思うけど、アンジェロって子どもっぽいところがあるの。末っ子でかわいがられてきたし、とにかくピアノに夢中だったから。注射も嫌いで……ほら、健診って採血があるでしょ? だから病院も怖がってたんだけど、ここであなたに会って、すごく安心したらしいの」
「あ、でも私、その時に彼を怒らせてしまったんです。後で、何度も謝られましたけど」
「その話は聞いたわ。あの子のピアノが好きって言ってくれたんでしょ? だからよ」
千晶は意味がわからず、目をしばたたく。
すると西村は肩をすくめて、またワインを口に運んだ。
「アンジェロ、まだ自分に自信がないのよ」
「まさか!」
「私のプロデュースにも問題があったの。すでにいろんなコンクールで実績はあったし、見た目がいいから、モデルっぽいことまでやらせちゃって……結果的にすごく人気が出たけど、音楽に興味がない人たちにも騒がれてね。ピアノに人生をかけている子だから、アイドル扱いはきつかったみたい」
「あ……」