可愛くないから、キミがいい【完】
食べ始めた広野を、ちら、と横目で見る。
素で、頬をゆるめて咀嚼していて、俺もつられて頬をゆるめそうになった。気持ち悪いので、本気でやめろよ、と自分に対して思う。
「今日は、生クリームつけないのかよ」
「はい?」
「鼻につけたら、今日なら、とってやるけど」
「うるさい。クレープが台無しになるようなこと言うのやめてよ」
なんとなく、小学生のガキのようなからかい方をしてしまったら、今の今まで、嬉しそうにしていた広野が盛大に嫌そうな顔をした。
ほんの少し後悔して、「悪かったよ」と軽く謝ったら、「……みゆは、もう、あんたにだけはそういうことしてあげないって言ったと思うけど」と俺を睨みながら、彼女はフォークに刺したラムレーズンをその小さな口におさめた。
言われた覚えがない。いや言われたかもしれない。
わざとなのだろうか。分からない。
お前だけが特別だと言われているような気がする。
そうならそう言えよと思うけれど、言えないこの女が、俺はいいなと思う。
いや、これもまた、ただの俺の願望かも知れないけれど。
そうだったら、かなり、ダサい。
まあ、クレープが美味いから何でもいい、ということにする。