可愛くないから、キミがいい【完】
いつか、ちゃんと、お前のことを好きになったのだと、はっきりと言葉にしようと思う。
ちゃんと言ったらこの女はどんな顔をするのだろうか。
分からないけれど、分からないからいいなと思う。
「ねえ」
「なんだよ」
「十秒たったんですけど」
「数えてたのかよ」
「別に」
「そろそろ、帰るか」
「……うん」
猫をかぶっていない状態のこの女は、どんな表情で、どんな言い方で、好きだというのだろう。
いつか知りたい。今じゃなくてもいい。
今は、別にこうやってそばにいるだけで、やはり満足しているのだった。
立ち上がって、今度は広野が「寒い」と言ったので、返事をせずに、手を重ねる。
自分の傲慢さにも、未熟さにも、何も気づいていないまま、このときの俺は、広野の隣で確かに幸せを感じていた。
【番外編・終】
(このあと、しっかり地獄を見る和泉でした!)