可愛くないから、キミがいい【完】



与えられた刺激のほとんどすべてが甘ったるかった。


時間感覚もなくなってしまう。

ただひたすらに
触れ合って、触れ合って、触れ合って。

それから。

和泉しゅうの目が少し細まって、眉間にほんの少しだけ皺が寄る。

その表情をぼやけた視界で確認した瞬間、私は糖度の高い幸せで満ちてしまった。


.
.
.

「しゅ、う」

「…っ、……ん?」

「す、き?」

「ん」


抱きしめてほしくなって、手を伸ばしたら、和泉しゅうが覆いかぶさってくる。

目を開けたら、すぐに和泉しゅうに瞳を捕らえられる。

なぜか、きゅうに、あんたのことが私は本当に大好きなんだよ、って泣きながら言いたくなった。でも言わないでおこうと思った。いまは、ちゃんと、伝わってる気がするから。


「……みゆ」

「……な、に?」


和泉しゅうは、なにも答えずに、首に顔をうずめてきた。私の名前を呼びたかっただけなのかもしれない。

鎖骨に柔く歯をたてられて、舌先でなぞられる。

終わったあとの、暑苦しい肌の重みが愛おしくて、言わないはずだったのに、だい、すき、と耳元で呟いてしまう。

和泉しゅうは、はー、と甘ったるい溜息を吐きだした後、「じゃないと困るからな」とムカつくことをかすれた声で言って、頷いた。


手を伸ばして耳朶に触れる。

抓ったら、和泉しゅうも私の耳に手を伸ばして、弱い力で耳朶を抓ってきた。


「………あんたの耳朶かたい」

「お前は、やわこい」

「しゅう」

「ん?」

「……ちゃんと、だいすき?」

「は?」

「みゆのこと」

「ちゃんともくそもなく、すき」

「だいすきってこと?」

「うん」



耳朶を抓り合いながら確かめることではない。

だけど、いいのだ。私と和泉しゅうだから。

それ以外の何も、今は関係ない。





「……じゃあ、もう一回、今から、してもいいよ」


耳朶を抓る指先に少しだけ力をこめたら、案の定「いてぇ」と文句が飛んできた。

だけど、和泉しゅうは不機嫌になることもなく、はは、と笑って、顔を近づけてきただけだった。

今、この男は私のことが大好きだと思ったから笑ったんだ、と解釈して、少しだけ満たされながら、ゆっくりと、目を閉じる。


唇が重なって、首にそっと手を回しながら、今はここが世界の真ん中でいい、と映画の舞台には永遠にならない和泉しゅうのベッドの上で私は思った。




fin.

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