可愛くないから、キミがいい【完】
接客の係は、色々な映画をモチーフにしたコスプレをする。学校祭まで残り2週間になって、当日の接客係になった人たちで集まり、どんなコスプレにするのか相談していた。
メンバーは、私とマユとミーナと、あとは、フツウに(私よりは可愛くないけど)可愛い女の子たち二人と、クラスの陽キャ君たち四人だ。
「みゆは、ディズミーのプリンセスとかプリンスとか素敵だと思うなあ」
正直、私はお姫様一択だ。
教室の端で机を囲みながら、頬杖をついて天使の顔を作っておく。
「みゆちゃん、そういうの似合いそう」
「えー、山路君も王子様、似合うよ?」
「でも、あれじゃない?衣装係が、たぶん大変だよね。お化けとかキャラクターとかでもありかも」
ミーナはこういうとき、結構現実的だ。
気心が知れているからこそ、可愛く、むー、と唇を尖らせてミーナを横目で見たら、ちょっと企んだような顔でウインクされた。
「みんなが普段のキャラとは違う感じのにしたら、私たちも楽しめていいじゃん」
「たとえば、どんなのがあんの?」
「えー、なんだろ。例えば、みゆとかだったら、王道プリンセスじゃなくて可愛いお化けの役やるのよ。いたでしょ?みんな知らないかな。アダムス、なんとかって映画だったと思う。三つ編みのいつも黒い服着てる女の子。確か、曜日が名前の。もうね、私は、みゆにそれやらせたいのよ」
ミーナが携帯でそのモデルをみんなに見せたら、えー楽しそう!とみんなが盛り上がる。
ミーナの言っている子のことは、知っている。プリンセスとは対極にいるような女の子だ。その映画もその子も大好きだけど、天使としてはあまり好ましくない。