キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。
弘香に別々に声をかけられて、髪を切ってよかったとなんとなく感じた。

大切に伸ばしてきた髪だったけど、今までだったら後ろ姿ではどちらかわからなかったはずだからだ。

ふたりでいると「莉奈真奈」とまとめて呼ばれることすらあったけど、ようやく私は〝私〟という人格を手に入れた気がした。


部活では中江くんがホームランを打った試合のあと、彼は監督の指示で〝一軍〟の練習に加わるようになった。

力が認められたのだ。


「アイツ、基礎体力半端ない」


汚れたユニフォームを洗濯するために回収していると、シートノックを終えてひと息ついた池田先輩がつぶやく。

彼の視線の先では中江くんがひたすら懸垂を繰り返していた。


ピッチャーは広背筋という大きな筋肉を鍛えるために、時々懸垂のメニューが組まれる。

この広背筋が鍛えられているほど球速が速くなるそうで、肩への負担も減るのだとか。


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