キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。
その後、私がベースを並べ終わった頃に先輩マネージャーの北見(きたみ)先輩と吉岡(よしおか)先輩が姿を現した。


「柳瀬さん、おはよ」

「おはようございます」

「先輩たち、重役出勤ですね」


あいさつをかわしていると、背後から嫌みな声がして固まる。
中江くんだ。


「な、なに?」

「もう準備終わったんですけど。あっ、部室からお茶を運んでこないといけないですね。お願いできます? 柳瀬には別の仕事頼んだんで」


私、なにか頼まれた?


「わかったわよ」


中江くんに抗議された先輩たちは渋々部室のほうに戻っていく。


「さてと、今日も頑張りますか」


気だるい様子でうーんと伸びをする中江くんが離れていこうとするので「待って」と止める。


「私、仕事頼まれたっけ?」
「忘れた。それよりお前」


彼は自分の右頬を指さして笑う。

な、なに?


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