先生がいてくれるなら②【完】

多分、この人は先生の前の教え子なんだ。


前の私立高校では今みたいに “ジキルとハイド” じゃなかったから、きっと先生のファンが沢山いたに違いない。


これはちょっと……いやかなり、めんどくさいな。



──この状況をどうすれば乗り越えられる?



「下手な嘘はつかないほうが良いわよ。それに、世間にバレればどうなるかなんて、いくらあなたがバカでもさすがに分かるわよね?」


「……」


「バレたら、先生は犯罪者ね。あなただってタダじゃ済まないわよ? それでも良いの?」


良いわけない。


俯いたまま何も言い返せない私を見て、彼女は得意気に笑っている。


「証拠だってあるから、シラを切ろうとしても、無駄」


「証拠……?」


その言葉に、私はハッと顔を上げた。


彼女はまた得意げに笑いながら頷いて、携帯を取り出し操作を始める。


そして、私に画面を見せた──。



そこには──私と先生が車の中でキスをしている写真が映し出されていた。



「……っ」



その写真は、クリスマスイブの日……車で先生のマンションに戻ってきて、駐車場に入る前にした、あのキス……。



「いくら車の中だからって、誰かに見られるかも知れないのに、大胆ねぇ?」


「こんなの、合成かも知れないじゃないですか」


私だってこのまま引き下がるわけにはいかない。


抜け道を探さなければ、どこか、何か、この人の罠から上手く抜け出す方法を……。


< 279 / 354 >

この作品をシェア

pagetop