先生がいてくれるなら②【完】
光貴先生の言葉に、私は一度口を開いたが、この屋上の状況を思い出して再び口を閉じて言葉を飲み込んだ。
電話越しでもその空気を敏感に察知した光貴先生が、『……側に誰かいますね。兄さんかな』と問う。
「……そう、です」
『やっぱり。……放課後に来ますか?』
「いえ、あの、出来れば……」
『……今すぐ?』
「はい」
『分かりました、気を付けて来て下さい』
「はい、ありがとうございます」
電話が切れる。
さすがは光貴先生、ほんの少し言い淀んだだけで、私の隣に誰かがいることを察した。
そして、それが彼の兄である藤野先生だとすぐに気付いた。
あぁ……、手が震えるのは、恐怖からだろうか、それとも藤野先生への罪悪感からだろうか。
“彼女が目を覚ました”──。
それは、一度止まっていた時計が再び動き出した事を意味する。
いや、それとも、カウントダウンが始まったのか──
カウントダウンだとすれば、それは、幸福へのカウントダウンか、それとも、地獄へのカウントダウンか……