先生がいてくれるなら②【完】
そんな気持ちが私の表情に出ていたのだろう、教授の表情がほんの少しだけ曇ったように見えた。
「きみは二年生だと言ったね? では、きみは修学旅行に……」
「はい、行けませんでした」
「……そうか、それは残念だったね……」
「……はい」
“残念” と言う言葉では私の気持ちを全て表す事は出来ないけれど。
「──光貴とも、知り合いかね?」
「はい。実は昨年の秋頃から私の兄がこちらの病院でお世話になっていました。光貴先生に偶然お会いしたのは今年の春でしたが、私がお見舞いに来るときに時々お目にかかる事がありました」
「なるほど……分かった」そう言って教授は一度言葉を切ったが、「最後にひとつだけ……」と言って私の目をじっと見た。