身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「俺に強引にされたいか?」

言うが早いか舌を捻じ込まれ、私は背筋を震わせた。

「っん……」

一瞬で体から力が抜け、根元から絡め取られた舌が柔らかくとろける。彼は私の口腔を余すところなく舐め、攻め立ててくる。

私の口の端から飲み込めなかった唾液が伝っても、舌を抜いてもらえない。

「……っぅ……」

涙目で胸を押し返し、やっと解放された。彼は濡れた私の口元を当然のように吸い上げて、私の瞳をのぞき込む。

「かわいいな、本当に」

「理性くらいあるって、さっき言ったばかりです……」

「キスだけだ。これくらい許せ」

菖悟さんは笑っているけれど、彼のキスは刺激が強すぎる。それに最後までしない分、キスはどんどん激しくなっていて、初心者の私は翻弄されてしまう。

「今夜も紗衣は俺の抱き枕だ」

けれど広い胸に抱かれると、私はそれだけで彼の全部を許すのだ。本当に彼が好きなのだと、改めて痛感した。たとえ今このまま襲われたって嫌いにはならないくらい、この気持ちは揺るぎない。

少し前には考えられなかったこの恋が、奇跡みたいに不思議だった。
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