身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
目を爛々とさせるあいりちゃんに、吐血と鼻血のレベルの違いがわからない、と私は苦笑した。でも確かに彼には人を惹きつける壮絶な魅力があり、私もどこかの国の王子様みたいだと思った。

きっともう顔を合わせる機会はないだろうけれど、とても印象的な人だった。

彼を思い出していたとき、事務所の電話が鳴る。

「お電話ありがとうございます。マリヨンの里谷でございます」

あいりちゃんは雑談を中断し、受話器を上げた。

そして次の瞬間、なぜか「ひゃっ」と小さな悲鳴を漏らす。首を傾げた私に、何か激しく視線でアピールしてきた。私宛の電話だろうか。

あいりちゃんは保留ボタンを押すと、「今井先輩! 高須賀さまからお電話です!」と声を上擦らせた。

「高須賀さま?」

「そうです高須賀です!」

まさか彼から電話があるなんて思っておらず、私はあたふたしながらも受話器を受け取る。
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