その手をつかんで
社食報として、定期的に全社員へ一斉メールを配信している。画像付きのメニューを一か月分まとめて、先月の最後の週にお知らせした。

社食報の評判も良さそうで、さらに嬉しくなる。私が顔を綻ばせると、杉田くんも笑う。


「それでね……あ、いや……」


声を弾ませる杉田くんの表情が突然強張った。

何かを言おうとしていたのに、私の背後に視線を送ってから、慌てだした。


「え? どうしたの?」

「あ、そうそう。打ち合わせがあるのを忘れてた。すぐ戻らなくちゃだ。じゃ、また」

「ちょっと、待ってよ。ほんとどうしたの?」


半分以上残っているコーヒーを一気に飲み干して立とうとしたから、引き止める。

どう見ても杉田くんの様子がおかしいからだ。

杉田くんは、身を屈めて小声で言う。


「後ろに専務いるよ。じゃ……」

「えっ?」


私が振り向いている間に杉田くんは、そそくさと出て行った、

その様子を見ていた蓮斗さんに、手招される、私は彼がいるテーブルに移動して、腰を下ろした。


「いつからいたんですか?」

「少し前だよ。楽しそうに話してるから、声をかけないでいたけど、杉田くんは気付いたね。じっと見ていたからかな」

「あ……それで……」
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