その手をつかんで
彼に洗面室を案内してから、二人用のテーブルにコンロや鍋など並べた。


「すみません、狭いのでテーブルもいっぱいになってしまって……」

「いや、全然大丈夫だよ。うわ、美味しそう!」

「シメは雑炊でいいですか?」

「もちろん! いただきます」


この部屋で蓮斗さんと鍋をつつくなんて、やはり信じられない。味は大丈夫かな?

彼はパクパクとふた口ほど食べて、「美味しい」と顔を緩めた。


「お口に合ったようで、良かったです」

「このスープがいい味だね。出汁も明日花が作ったの?」

「ちょうど昨日作ったカツオと昆布の出汁があったので、それを使いました」

「なるほど。明日花らしく優しい味で、とても美味しい」


蓮斗さんは微笑んで、再び食べ進めていく。

しめの卵雑炊まで、堪能して緑茶を飲みながらひと息ついた。


「ほんと美味しかった! 明日花はやっぱり料理上手だよね」

「ありがとうございます。作るのが好きなので、美味しいと食べてもらえて嬉しいです。これからもいろいろ作るので、食べてくださいね」

「うん、楽しみにだな。でも、明日花も仕事があるから、無理しなくていいからね」
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