その手をつかんで
蓮斗さんはいつも気遣ってくれて、優しい。喜んで食べてもらえるなら、作りがいがある。だから、少しくらい忙しくても、彼のために作りたい。

お腹も心もほんわかさせていると、蓮斗さんが「結婚だけど」と話を切り出した。そういえば、話があるからとここに来たのだった。

結婚を具体的にするのは、まだ先だと思っていたから、ちょっと驚く。

婚約したのだから、いつ結婚してもおかしくはないが、実のところ結婚を想像出来ていなかった。


「年内に入籍して、一緒に住みたいと思っている」

「年内ですか?」


あと一か月で今年が終わろうとしている。そんなに早くに入籍することになるとは……社長に聞かれた時は一年以内に結婚したいと蓮斗さんは、答えていた。

気が変わったのかな?

入籍はすぐにできるかもしれないけれど、住居も簡単に決められるものなのだろうか?

心の中での疑問に蓮斗さんが答える。


「アマリリスタウンの中に買ったマンションがある。買っただけで、住んではいない。そこにふたりで住みたいのだけど、明日花がもしイヤだと言うなら他を探すよ。その場合、年内はちょっと厳しいかもしれないけどね」
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