その手をつかんで
聞きなれた明るい声に顔が緩む。


「瑠奈、おめでとう!」

「ありがとう。そこ、座ってね」


すべての病室が個室だと噂に聞いてはいたけど、病室とは思えない部屋だった。

室内を見回しながら、促されたソファに座る。よくある簡易な椅子ではなくて、二人掛けのソファだ。

さすが、高級病院と言われているだけあり、座り心地も良い。まるでホテルのようだ。いや、私が利用したことのあるホテルの客室に、こんなソファはなかった……。

ベッドから降りた瑠奈は、向かい側のソファに腰をおろす。


「体調はどう? 出産はやっぱり大変だったよね?」

「うん、痛かったよー。体が引き裂かれるかと思った。でも、赤ちゃん見たら涙出ちゃったー」

「そっか、やっぱり感動するよね。すごいなー」


水色のふんわりとしたパジャマを身に着けている瑠奈の顔色は、大変だったというわりに、出産後の疲れがないくらいに明るい。産後の経過が順調なことを物語っている。


「ねえ、赤ちゃんはどこにいるの? 今は会えない?」

「ううん、今連れてきてくれる……あ、来た! はーい、どうぞー」


瑠奈のベッドの横にベビーベッドが置かれているが、そこに赤ちゃんはいなかった。

ドアがノックされて、瑠奈が返事をすると赤ちゃんを抱いた看護師が現れた。
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