その手をつかんで
「俺の分もあると言ったよね? 俺のことを考えて、作ってくれたのでしょ?」

「そう……そうですけど」


確かに蓮斗さんの分もと考えて、蓮斗さん用に作った。間違ってはいないが、ハッキリそうだとも言いにくい。

複雑な思いを抱えながら、瑠奈のところに行く。


「明日花ー、いらっしゃい。あがって、あがって」

「うん、ありがとう。これ、カップケーキ」

「わあ! ありがとう。あ、お兄ちゃんも早く入ってよ」


私の後ろにいた蓮斗さんはやっと自分に顔を向けられて、苦笑した。


「俺はついでに呼ばれたみたいだな」

「えー、そんなことないよ。ほら、お兄ちゃんも早く!」


否定するものの、図星を突かれた瑠奈は焦っていた。

私も笑っていると、瑠奈の背後から、咲里奈ちゃんを抱っこした瑠奈の夫である涼輔さんが現れる。


「瑠奈は明日花さんが大好きだからね。明日花さん、こんにちは」

「こんにちは、おじゃまします」

「よう、涼輔」


私が涼輔さんと顔を合わせるのは、ふたりの結婚式以来。大学まで瑠奈を迎えに来ていたときは、何度か挨拶をしている。

蓮斗さんと涼輔さんは同い年で、友だちだという。


「いつまでもこんなところで話していないで、入ってー」


再び瑠奈に促されて、私たちはリビングへと移動した。
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