その手をつかんで
「そうだ、ケーキかなにかを買っていこうと思っていたんだ。ショッピングモールの方にケーキ店、あったかな」

「ケーキですか?」

「瑠奈のやつ、手ぶらで行くと怒るんだよ」

「フフッ、そうなんですね。でも、これがあるから大丈夫ですよ」


私は持っていた紙袋を蓮斗さんの前に掲げた。彼は目をぱちくりさせる。

私はさっきまで強張っていた顔を緩めて、蓮斗さんに説明した。


「これ、中身はカップケーキなんですよ。瑠奈からリクエストされて、作ったものですけど」

「カップケーキ?」

「瑠奈が気に入ってくれているので、たまに作っています。蓮斗さんの分もあるので、良かったら食べてくださいね」

虚を突かれたような反応をしていた蓮斗さんは、慌てて「うん、うん」と言ったあとで「どんなのか楽しみ」と顔を綻ばせた。

期待されすぎても……想像と違ったと思われたくない。


「普通の味ですよ」

「明日花が俺のために作ってくれたものなら、絶対美味しいと思う」

「え、私、蓮斗さんのためと言いました?」


言っていないよね?
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