その手をつかんで
疑問に対する回答は、とんでもない公私混同な要求だった。だけど、逆らえず、了承する。

その後、社員食堂に行ったが、私たちは注目の的となる。

蓮斗さんがいるのが珍しいのか、蓮斗さんといる私が気になるのかはわからないが、利用していたほとんどの人が私たちを見た。

身を縮みこませて食べる私と違って、蓮斗さんは姿勢良くきれいな所作で食べている。

彼は周囲の視線を感じないのだろうか。


「明日花が考案するメニューは来月から食べれるかな?」

「多分そうなるかと思います。詳しいことは午後から教えてくれるらしくて、今はわかりません」

「説明は杉田くん?」

「はい」

「そうか」


蓮斗さんは私がなんとも思っていないと言っても、杉田くんのことを気にしている。

杉田くんも私のことは懐かしく思っているだけに違いないから、仕事以外で関わることはない。

しかし、蓮斗さんは念押しする。


「絶対、俺のことだけを考えて。杉田くんには気をつけて」


どう気をつけろと言うのだか……。
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