その手をつかんで
自分たちが悪いと言うふたりに対して、私は首を横に振った。


「いいえ、悪いのは私です」


ふたりだけでなく、お父さんも涼輔さんも「えっ?」と驚いた顔した。

私はひと呼吸おいてから、言葉を続ける。


「蓮斗さんのような立派な人に、私はふさわしくないです。瑠奈に勧められた時に断らなかった私がいけないんです。申し訳ございませんでした」


お父さんに向かって、深々と頭を下げる。

ふたりを騙してはいないけど、蓮斗さんに惹かれたから少しくらい夢を見させてもらおうと思った。

浮ついた気持ちで、お試しの付き合いを了承し、仮の婚約者も断らなかった私が結果的にふたりを苦しめることになった。


「明日花が謝ることではないよ。頭をあげて」


優しい蓮斗さんに涙が滲む。

でも、ここで泣いちゃダメだ。


「蓮斗さん、ごめんなさい。もう仮の婚約者ではいられません。お試しのお付き合いもできません。これ以上続けていたらまた誤解されて、取り返しのつかないことにもなります」

「何を言うんだよ? 俺は仮でも、お試しでも明日花の一番近くにいたいんた」

「ダメです、私では。私がイヤになったら、やめると言いましたよね?」

「そうだけど、まさか……」
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