ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-

部屋に到着すると、おーちゃんがチラリと腕時計を見た。


「そろそろ腹減っただろ」

「うん」

「お前の足もそんなだし、適当に買ってくるのでいいか?」


コクリと頷くと、おーちゃんはわたしをソファに座らせ、玄関へと踵を返した。


「じゃ、ちょっと行ってくるよ」

「行ってらっしゃい」


松葉杖を近くに立てかけて、ソファにゴロン、と体を預けたわたしは、そのままおーちゃんを見送った。

おもむろに携帯を取り出して、美月に骨折の旨を伝えるメッセージを送りつける。


……笑われるだろうな。

一応、心配はしてくれるだろうけど……絶対笑われる。

もはや、自分でもおかしく思えてくるもん……。


かっこ悪いギブス姿の足元を見て、はああ、とため息をつく。
< 139 / 405 >

この作品をシェア

pagetop