ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
部屋に到着すると、おーちゃんがチラリと腕時計を見た。
「そろそろ腹減っただろ」
「うん」
「お前の足もそんなだし、適当に買ってくるのでいいか?」
コクリと頷くと、おーちゃんはわたしをソファに座らせ、玄関へと踵を返した。
「じゃ、ちょっと行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
松葉杖を近くに立てかけて、ソファにゴロン、と体を預けたわたしは、そのままおーちゃんを見送った。
おもむろに携帯を取り出して、美月に骨折の旨を伝えるメッセージを送りつける。
……笑われるだろうな。
一応、心配はしてくれるだろうけど……絶対笑われる。
もはや、自分でもおかしく思えてくるもん……。
かっこ悪いギブス姿の足元を見て、はああ、とため息をつく。