ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
「あ、そうだ愛花」

「ん?」


いただきます、をしようと手を合わせたまま、わたしはおーちゃんを見る。


「来週、午後に休みとれた。学校まで迎えにいくから、一緒に行こう」


どこに、なんて、聞く必要はなかった。


「……ん、わかった」


わたしは素直に頷いて、今度こそいただきますをした。

途端に憂鬱な気分に襲われて、運んだひと口をほとんど噛まないまま飲み込んだわたしは、喉のところでゴクリ、と大きな音を立てた。
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