ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



***



寝室に入るなり、おーちゃんはわたしの足を気遣いながら、ベッドに腰掛けた。

手を引かれ、わたしもその隣に腰を下ろす。


「話があるんだ」


向き合うように言われて、わたしはその先を促すように、おーちゃんを見上げた。


「俺は、お前のことが好きだよ。……でも、今すぐに付き合うとか、……そういうことは、考えてない」


告げられた言葉に、あまり驚きは感じなかった。


「できれば、結花が戻ってくるまでは、今の関係のままでいたいんだ」

「……今の、関係」

「うん。結花と三人でいたときと変わらない、俺たちのまま」


……おーちゃんの言いたいことは、わたしにはなんとなく理解できた。

きっと、お姉ちゃんのことを、置いてきぼりにしたくないんだと思う。

お姉ちゃんの知らない間に、わたしたちの関係を変えることに、引け目を感じているんだ。

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