ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-
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寝室に入るなり、おーちゃんはわたしの足を気遣いながら、ベッドに腰掛けた。
手を引かれ、わたしもその隣に腰を下ろす。
「話があるんだ」
向き合うように言われて、わたしはその先を促すように、おーちゃんを見上げた。
「俺は、お前のことが好きだよ。……でも、今すぐに付き合うとか、……そういうことは、考えてない」
告げられた言葉に、あまり驚きは感じなかった。
「できれば、結花が戻ってくるまでは、今の関係のままでいたいんだ」
「……今の、関係」
「うん。結花と三人でいたときと変わらない、俺たちのまま」
……おーちゃんの言いたいことは、わたしにはなんとなく理解できた。
きっと、お姉ちゃんのことを、置いてきぼりにしたくないんだと思う。
お姉ちゃんの知らない間に、わたしたちの関係を変えることに、引け目を感じているんだ。