ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


「あのねえ……。好きな子が、あんなにかっこよくて……しかも、自分よりずいぶんと大人な人とふたり一緒の家で生活してるなんてこと知ったら、たまったものじゃないと思うよ」

「あ……」


『好きな子』という言葉に少し恥ずかしくなったけれど、美月の言っていることは、説得力があった。

いくら告白をなかったことにしていいと言われたからって、それに甘えておーちゃんの話までしてしまうのは、確かに無神経すぎるよね。

できればこれ以上、康晴を傷つけることはしたくない。

このままなにごともなく、前みたいな友達に戻れたらいいな……と、思ってる。


「うん、言わない」


わたしはコクリと頷いた。


「そのほうがいいよ。本当に兄妹だって、思わせておいたほうがさ。……康晴にとっては、おーちゃんの嘘がありがたかったかもね」

「そだね」


美月と顔を見合わせて、困ったように笑った。
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